輸出ビジネスにおいて重要な「インコタームズ(Incoterms)」をご存じでしょうか? 貿易に関わる企業や輸出代行を行う私たちカトレックスにとって、インコタームズを正しく理解することは、コストやリスクを適切に管理する上で欠かせません。本記事では、インコタームズ2020の概要や各条件について分かりやすく解説します。
1. インコタームズとは?
インコタームズ(Incoterms)とは、「International Commercial Terms(国際商業取引条件)」の略で、貿易取引における売主(輸出者)と買主(輸入者)の責任範囲を明確にする国際規則です。 これにより、国際取引で発生する輸送費や保険、リスク負担の範囲が統一的に定義されます。
インコタームズは、国際商業会議所(ICC)によって策定され、定期的に改訂されています。これまでの主な改訂は、インコタームズ2010(2011年1月1日施行)、インコタームズ2000(2000年1月1日施行)、インコタームズ1990(1990年1月1日施行)などがあります。
現在の最新版はインコタームズ2020で、2020年1月1日から適用されています。
2. インコタームズはなぜ必要なのか?
貿易取引では、貨物の輸送中にさまざまな費用やリスクが発生します。これを明確にしないと、
どこまで売主が負担するのか?
どのタイミングで買主がリスクを負うのか?
輸送費や保険料は誰が支払うのか?
といった問題が生じ、トラブルの原因になりかねません。
インコタームズを適用することで、こうした曖昧な点が解消され、売主と買主がスムーズに取引できるようになります。
当社のような輸出代行を行う企業にとっても、どの貿易条件で契約が締結されているのかを把握することは、依頼者様の責任範囲を明確にするために非常に重要な情報です。
3. インコタームズはいつ、誰と誰が、どのようなタイミングで決めるのか?
インコタームズは、売買契約が締結される段階で決定されます。通常、売主(輸出者)と買主(輸入者)が取引に関する交渉の中で、どのインコタームズを適用するかについても話し合います。つまり、正式な契約書を交わす前に確定しておくことが重要です。
売主と買主は、輸送手段、リスクの負担場所、コスト負担の明確化などを考慮し、最適なインコタームズを選定する必要があります。例えば、売主が輸出通関を担当する場合、FOBやFCAを選ぶことが多いですが、リスクや費用の範囲によってCIFやCIPが選ばれることもあります。 また、インコタームズは交渉の材料として利用されることがあります。FOBで進めていた案件であるが、買主より「契約条件としてCIFに変更」といった具合で、状況に応じて柔軟な対応を求められることもあります。 そのためインコタームズ条件による輸送コストが価格に与える影響を十分に考慮せずに交渉を進めると、後々コスト負担が重荷となる可能性があるため注意が必要です。
選択されたインコタームズによって、売主と買主の責任範囲やリスク・コストの移転タイミングが決まるため、双方が十分に理解しておくことが非常に重要です。
4. インコタームズ2020の貿易条件一覧
インコタームズ2020では、全部で11種類の取引条件が定義されています。
全輸送モード(海上輸送以外も含む)で利用可能な条件】
貿易条件 | 売主の責任が終了するポイント | 売主の負担 | 買主の負担 |
EXW(Ex Works) 工場渡し | 売主の工場または倉庫 | 最小限(貨物の引渡しのみ) | すべての輸送・保険・通関 |
FCA(Free Carrier) 運送人渡し | 指定の運送人へ引渡し | 輸出通関+指定場所までの輸送 | 以降の輸送・保険 |
CPT(Carriage Paid To) 輸送費込み | 指定仕向地まで | 輸送費負担 | 保険とリスク負担 |
CIP(Carriage and Insurance Paid To) 輸送費・保険込み | 指定仕向地まで | 輸送費+保険負担 | 通関費用・輸入側リスク |
DAP(Delivered at Place) 仕向地持込渡し | 指定仕向地で買主へ引渡し | 輸送費+リスク負担 | 輸入通関・関税 |
DPU(Delivered at Place Unloaded) 仕向地荷降ろし渡し | 仕向地で荷降ろし後に引渡し | 荷降ろし費用も負担 | 輸入通関・関税 |
DDP(Delivered Duty Paid) 関税込み持込渡し | 指定仕向地で買主へ引渡し | すべての費用・リスク負担 | 最小限 |
【海上輸送・内陸水路輸送でのみ利用可能な条件】
貿易条件 | 売主の責任が終了するポイント | 売主の負担 | 買主の負担 |
FAS(Free Alongside Ship) 船側渡し | 本船の横で引渡し | 港までの輸送・輸出通関 | 本船への積み込み・輸送 |
FOB(Free On Board) 本船渡し | 本船に積み込んだ時点 | 本船への積み込み費用 | 船積み後のリスク・輸送 |
CFR(Cost and Freight) 運賃込み | 仕向港までの輸送 | 運賃負担 | 通関・荷降ろし |
CIF(Cost, Insurance and Freight) 運賃・保険込み | 仕向港までの輸送 | 運賃+保険負担 | 通関・荷降ろし |
まとめ
インコタームズ2020は、国際取引において売主と買主の責任範囲を明確にする重要な規則です。特に、輸出代行を行う企業や貿易担当者にとって、適切な条件を選ぶことはコスト削減やリスク管理に直結します。
カトレックスでは、貿易条件に関するアドバイスや輸出手続きの代行を行っています。貿易に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください!